明石の御方
光源氏が京の都から須磨に流され、やがて明石へ移住した時に出逢います。
控え目ですが、気品と教養があり、和歌や音楽も堪能で、知性あふれる女性。
身分の違いから求愛を拒んでいましたが、最終的に光源氏の愛を受け入れ、女の子を身籠ります。
やがて、自分の身分の低さから我が子の出世が阻まれることを案じ、愛する娘を源氏と紫の上のもとに託し、
自分は影の存在となり耐え通します。
光源氏の最愛の女性とも言われる紫の上にとって、最も脅威を感じた存在であったと言われ、
衣配りでは、紫の上が明石の御方に嫉妬をする様子が描かれています。
正月の衣装として光源氏から明石の御方に贈られた着物は、
「梅の折枝、蝶、鳥飛びちがひ、唐(から)めいたる白き小袿(こうちき)に濃きが艶やかなる重ねて」
小袿とは高貴な女性が日常に着た、丈が短めの衣装です。
当時、外国製品のものは国内製のものより格上とされていたため、異国風(唐めいたる)の衣装は、とても高雅で格調の高いものでした。
光源氏が、明石の御方はそれを着るに相応しい人物だと選んだことから、特別な想いを抱いていたことが伺い知れます。
明石の御方の聡明さを思わせる、やや透明感のある白き小袿を、「
白色」の軸色で表現し、艶やかな濃き(紫)色を天冠と首軸、尻軸にそれぞれ配し、ペン先には蝶を刻印しました。